本気で学ぶロシア文字と発音 ~なぜいつまでも日本語訛りなのか?~
ネイティヴ発音の習得 マルチリンガル学習法 ロシア語 外国語学習 文字の覚え方
※本ブログは私のYouTube動画のテキスト版です。
発音が含まれる箇所については元の動画を参考にして下さい。
今回動画長いため、現状、正しくファイルやリンクが貼れていない場合がございますがご了承ください。
本気で学ぶロシア文字と発音 ~なぜいつまでも日本語訛りなのか?~
Здравствуйте! 理系の言語オタク日向です!
真面目にロシア語を学びたいそこのあなた!この動画を最後まで見てください。
市販の教科書やほかのチャンネルの動画よりもロシア文字について一番詳しく解説している自信があります。
実は複数の方から「ロシア文字と発音」の習得方法について解説してほしいとリクエストを頂いておりました。
そこで私、理系の言語オタクが数カ月間の調査を行い、独自の学び方を開発しました。
よって今回のテーマは「本気で学ぶロシア文字と発音」です。
そのため、この動画では下記が実現可能となる内容にしています。
- ロシア文字とキリル文字の違いが明確になる
- 難解な筆記体の突破口がつかめる
- 日本語話者向け発音の習得ができる
それらが実現できると、短期間でロシア文字をスラスラ読めて、さらにロシア人にも綺麗だと褒められる発音になり、
今後中級レベルに突入した場合でも筆記体を臆せず読めるはずです。
こんな未来が得られたら、素晴らしいと思いませんか?
これまでロシア語習得に何度も挫折しそうになった方もいらっしゃると思いますが、
もう一人で抱え込まなくても大丈夫です!
ぜひ私と一緒に着実にロシア文字と発音を学び、楽しいロシア語ライフを手に入れましょう!
チャンネル紹介
本題に入る前にチャンネルのご紹介です。
私のチャンネルのキャッチフレーズは「今日からあなたもマルチリンガル!」です。
70言語以上を勉強中の言語オタクの私が理系的発想と語学ミニマリストの観点から、
マルチリンガルになるための考え方やコツを発信しています。ぜひチャンネル登録をお願いします!
目次
- ロシア文字とキリル文字の違い
- 筆記体の重要性と便利なサイト
- 発音習得には音声学!
- 母音とストレスアクセント
- 母音の発音練習
- 硬音記号と軟音記号
- 子音の発音練習
- 発音習得のまとめ
- おまけ:ロシア文字を学べる語学アプリ
ロシア文字とキリル文字の違い
それではここからが本題です。
一般的にロシア語を表記するために使われる文字には
「ロシア文字」と「キリル文字」という2種類の言い方があります。
実際、教科書やWebサイト、さらにはネイティヴ話者まで、「ロシア文字」と「キリル文字」の
どちらの言い方も使うので中には混乱している学習者もいるのではないでしょうか?
実は「ロシア文字」と「キリル文字」には違いがあります。
結論から言うと、ロシア語で使われている文字を「ロシア文字」と表現するのが正しいです。
それでは両者の違いを見ていきましょう。
◯ロシア文字
まずロシア文字とは、文字通り、ロシア語を表記するための文字のことです。
下図の通り、全部で33文字あります。
◯キリル文字
次に代表的なキリル文字を見てみましょう!
キリル文字は様々な言語で使われているため下図の通り、ロシア文字以上に文字の種類が多いです。
これも全部ではなく、あくまでも抜粋です。
ロシア語では使われていない文字がほとんどを占めていることがわかるでしょうか?
https://en.wikipedia.org/wiki/Cyrillic_script_in_Unicode
さて、この2つの文字は一体どのような関係なのか興味はありませんか?
この答えは「ロシア文字の成り立ち」にあります。
ここでロシア文字の成り立ちを図で簡単に表現すると下図のようになります。
実はロシア文字はキリル文字を元に作られているのです。
よってロシア文字のことを広い意味でキリル文字と表現している説明もありますが、
厳密には「ロシア文字」という表現のほうが正確ということを覚えておきましょう!
ちなみに数学の集合の概念で表現すると、
キリル文字は全体集合で、ロシア文字はキリル文字の部分集合や要素に当たります。
そのため、この動画でも「ロシア文字」と「キリル文字」を区別して呼ぶことにします。
https://en.wikipedia.org/wiki/Russian_alphabet
ここまでの話を整理すると、ロシア語に最適化されたキリル文字が「ロシア文字」と言えます。
これでロシア文字とキリル文字の違いが明確になりましたね。
ちなみにキリル文字の分布、使用言語、成り立ちなどもっと深い内容に興味のある方は
動画概要欄にリンクを貼っていますのでそちらも御覧ください。
(以下、ブログのみ掲載)
ではどのような言語で、キリル文字が使われているのでしょうか?
下図の通り、キリル文字はロシア語と系統関係が近い言語で使われていることはもちろん、
全く系統関係がない言語でも用いられています。
インドヨーロッパ語族
スラヴ語派
教会スラヴ語、ブルガリア語、マケドニア語、セルビア語、モンテネグロ語、ロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語、ルシン語
イラン語族
クルド語、オセット語、タジク語
イタリック語派
モルドバ語
ウラル語族
コミ・ペルミャク語、牧地マリ語、山地マリ語、キルディン・サーミ語
チュルク語族
アゼルバイジャン語、バシキール語、チュヴァシ語、カザフ語、キルギス語、タタール語、ウズベク語
モンゴル語族
ブリヤート語、ハルハ語、カルムイク語
コーカサス諸語
アブハズ語
シナ・チベット語族
ドンガン語
参考として下図のようにキリル文字を使っている言語の分布を地図で見てみましょう!
中にはローマ字と併用している地域や過去に使用していた地域があることが分かります。
そして、それらの言語では標準的なキリル文字では表記できない発音などがあるため、
独自に文字を追加するなどして前述のキリル文字の表の通り、文字が増えているというわけです。
https://ru.wikipedia.org/wiki/Алфавиты_на_основе_кириллицы
実はロシア文字までの成り立ちについて、タイ文字に関する過去動画で触れています。
「世界一効率的なタイ文字の覚え方 「文字の出現率」と「タイ文字の起源」」
各文字とキリル文字の対応表を作成しているので、他の言語を学習済みの方は
こちらを対応付けると学びが深まるかもしれません。
(以上、ブログのみ掲載)
筆記体の重要性と便利なサイト
さて、ここでは実際にロシア文字を覚えたあとに注意すべきポイントをご紹介します。
特に私と同じく独学でロシア語を学習している人や語学アプリで勉強されている方は要注意です。
それは何かというと、「筆記体」です!
ずばり、筆記体はロシア文字を学ぶ上で避けては通れないと断言します。
むしろ、この話をするために動画を作ったと言っても過言ではありません。
まず前提知識として、ロシア文字には代表的な書体として次の3つが存在します。
・ブロック体
教科書やWebで一番良く見る書体です。角々しています。
Жизнь прожить – не поле перейти.
・イタリック体
筆記体とブロック体の中間です。ロシア語の辞書やWebでもそこそこの頻度で見かけます。
иの文字がローマ字のuみたいになったり、тはローマ字のmみたいに見えます。
Жизнь прожить – не поле перейти.
・筆記体
手書きの文字です。ロシアでは小学校一年生で習うそうですが、練習しなければ、読みにくいです。
個人的にはロシア語のYouTube動画のサムネイルで見ることもあります。
Жизнь прожить – не поле перейти.
https://es.wikipedia.org/wiki/Alfabeto_cursivo_ruso
https://ru.wikipedia.org/wiki/Русское_рукописное_письмо
そんな筆記体についてここでクイズです!
・クイズ
ロシア語の筆記体についてとったほうがいい行動は次のうちどれでしょうか?
1、古い文献に出てきて難解だが、専門家でないので無視する
2、ロシア人とやり取りするときによく出てくるので、普段から慣れておく
3、現在では殆ど見かけず、なんとなく読めるので後から勉強する
正解は「2、ロシア人とやり取りするときによく出てくるので、普段から慣れておく」でした。
いざロシア語を勉強しようと思って、ロシア語の教科書や学習サイトを開いたら、
筆記体があるということは最初に少しだけ触れていることもあるのですが、
残念ながら、基本的に市販の教科書や学習サイトは筆記体で書かれることがありません。
そのため、周りにロシア人もおらず独学で勉強されているような方は
ロシア文字はゴシック体だけを覚えておけば大丈夫!と勘違いする人もいるかもしれません。
私の失敗談でいうと、高校時代の私はロシア語において筆記体がそこまで重要と思っていませんでした。
そんな中、人生2度目のロシア人との会話で聞き取れない単語を紙に書いてもらったのですが、
そこで彼らが書いたのは“筆記体”だったのです。当時はさっぱり読めず詰んだ経験があります。
その後も、ロシア人の先生が黒板にゴシック体を書きづらそうにしており、
ちょっとしたメモ書や手紙も筆記体になっていていました。
そのような体験から、「こりゃ本格的に勉強せなあかんわ」と思い、大学生になってとうとう練習し始めました。
とはいえ、これまでブロック体でしか書いたことがなかったので、
急に筆記体を書き始めても、馴染むまでに数年ほど時間がかかりました。
「いやいや、そんなん、あんたの主観やろ?」と内心思っている人もいるかも知れません。
ですが、以下のYahoo!知恵袋の内容を御覧ください。
筆記体についての質問があり、その回答としても筆記体の習得は必須という意見が多く見受けられます。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14225851629
初心者ですぐに身につける必要があるものではありませんが、ロシア語のレベルが中級くらいになると
筆記体の壁に必ずと言っていいほどぶつかりますので、ご注意ください!
「いやいや、筆記体くらい練習すればすぐに読んで書けるんちゃうん?」と思いませんか?
様々な言語を学習した私の経験上、ローマ字の筆記体やアラビア文字はむしろ読みやすい部類に入ります。
一方、ロシア語の筆記体は度を越しており、正直簡単に読める代物ではありません。
その理由として、文字が繋がることで、文字の区切りが分からくなるということがあるからです。
Ваша шиншилла решила отправиться в нашу школу.
Ваша шиншилла решила отправиться в нашу школу.
「あなたのチンチラは私達の学校に向かうことを決めました。」
https://www.boredpanda.com/russian-cursive/
ある意味、ロシア語学習者あるあるかと思います。同じ体験をした人は是非コメントで教えてください。
「筆記体が重要なんは分かったけど、なんかええ勉強法あんの?」と思う人もいませんか?
結論からお伝えすると、画期的な学習方法があります!
従来の筆記体の学習方法と言えば、見本を見ながら、練習するというのが一般的ではないでしょうか。
私もかつてはそうしていました。しかしながら、ロシア語においてはその学習方法には大きな問題点があります。
それは「ゴシック体と筆記体を比較しながらしっかり学べる教材が乏しい」ということです。
一部の市販の教科書で個々の文字の筆記体に触れてはいるものもありますが、
筆記体で書かれた長文の練習が無いものがほとんどです。
仮にネットで探しても大概は筆記体のサンプルが載せてあるのみで、
その文章に対応するゴシック体が併記されているわけでもないこともしばしばあります。
さらに困ったことに、本場のロシア人の筆記体は人によってかなり癖がありますが、
それについても詳しく解説している教材を探すほうが大変ということも想像できますよね?
このように筆記体は重要だと気付いたとしても、
学習環境としては大変非効率な状況にあり、私は非常に憤りを感じていました!
そんな中、筆記体に悩む私達ロシア語学習者の問題を解決してくれるWebサイトを発見しました!
それは「横浜ロシア語センター」のXの投稿内容にありました。
https://twitter.com/yokohamarosiago/status/1516729751435505673
なんと以下のサイトを使うと、ロシア語の文章を手書きのようなフォントに変換することができます!
https://handwritter.ru/new.html
これを使えば、無料であなたが読みたい文章を使って、
ゴシック体・筆記体をそれぞれ比較しながら、習得することができます。
(動画内でデモ)
このサイトが良いのは10種類以上のフォントがあるということです。
もちろん、このサイトを使わなくても、Microsoft Wordでもロシア語の手書きに近いフォントがいくつか存在します。
しかし、Wordのデフォルトのフォントだと種類が少なく、
さらに筆記体というよりイタリック体のものが多いという欠点があります。
したがって、そのような教材としての筆記体を色々比較しながら学べるこのサイトは
大変素晴らしいと言えます。
実際にロシア語の文章をこのサイトで筆記体にすると変換すると、下図のようになります。
Расцветали яблони и груши,
Поплыли туманы над рекой.
Выходила на берег Катюша,
На высокий берег на крутой.
https://ru.wikipedia.org/wiki/Катюша_(песня)
ちなみに「横浜ロシア語センター」のXの投稿によると、
この筆記体変換サイトはロシア語以外のキリル文字についても一部対応しているそうです。
具体的にはウクライナ語、カザフ語、バシキール語、サハ語などの筆記体があるそうです。
もしそれらの言語に興味があるなら、ぜひお試しください。
ここまで筆記体の話は以上となります。
ぜひゴシック体だけでなく、筆記体も合わせて勉強してみてくださいね!
発音習得には音声学!
ここからは複数の方からリクエストを頂いていた個々の文字の発音の習得方法についてご紹介します。
発音習得と言えば、一般的にはネイティヴに直接教えてもらうという方法があるのではないでしょうか。
しかし、この方法には限られた人にしかできないという問題があります。
例えばあなたは以下のような状況に直面していませんか?
- ロシア語ネイティヴが身近にいない
- ネイティヴの発音通りに真似ができない
- ネイティヴとは言え、日本語使用者向けに正確な解説ができるとは限らない
そのため、ネイティヴの先生の発音を真似すれば良いという教えは一見、近道のように思われますが、
残念ながら科学的に見たときに再現性がない、つまり、限られた人にしかできないという状態が発生します。
そのような外国語の発音習得の課題を一度に解決してくるのが「音声学」です!
発音を専門で扱う音声学のノウハウを使えば、自分自身でロシア語の発音の間違いを気づくことができます。
なぜかというとすでに習得している日本語とロシア語の発音を理論的に比べることができるからです。
これによって母語さえあれば、ネイティヴの先生が身近にいなくでも自分でも修正でき、
最終的にネイティヴ並みに発音が綺麗と言われること間違いなしです!
そんな音声学を学ばないというのは極寒の中、日本海を泳いでロシアまで行くようなものです。
ぜひあなたには音声学というプライベートジェットで優雅にロシアへ行ってもらいたいと切に願っています。
ここまでの話でロシア語の習得において音声学を活用することがいかに重要であるかをご理解いただけたでしょうか?
「ロシア語×音声学なんて覚えるの増えて大変ちゃうの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
そんなときこそ私の出番です!
ロシア語学習と音声学をバランスよく組み合わせた唯一無二の発音習得方法をご紹介します。
発音解説の前提
- 音声学を参考にした発音の習得方法をご紹介します。
その際、国際音声記号という国際基準の発音記号や、それに対応するサンプル音源を使います。 - 国際音声記号についてロシア国内の学派で表記や定義が違うこともありますのでご了承ください。
さらにロシア語使用者でも民族によってはウクライナ語訛りやグルジア語訛りなどの母語の訛が存在します。
したがって、今回ご紹介する発音は絶対的な正解とは限らず、あくまでも一つの基準であることに注意してください。 - 例外的な発音を持つ単語も存在しますが、構成上割愛している部分もあります。
私が重要だと判断したものを中心にご紹介しますが、コメントいただければ分かる範囲で回答する場合もあります。
なお私は音声学者ではありませんので、もし有識者の方で不足や不正確な点にお気づきになられましたら、
これから学ぶ学習者の手助けになるようにコメントで補足いただけますと幸いです。
皆さまで一緒に楽しいロシア語ライフを手に入れましょう!
ここからは発音について実際に解説していきます。
文字の名称や発音については一般的に以下のようになっています。
ロシア文字一覧
大文字 | 小文字 | 文字の名称 | 国際音声記号(代表的なもの) | ローマ字転写 |
---|---|---|---|---|
А | а | а [a] | [a] | a |
Б | б | бэ [bɛ] | [b] | b |
В | в | вэ [vɛ] | [v] | v |
Г | г | гэ [ɡɛ] | [ɡ] | g |
Д | д | дэ [dɛ] | [d] | d |
Е | е | е [je] | [je],[ ʲe] or [e] | ye,je,e |
Ё | ё | ё [jo] | [jo] or [ ʲɵ] | yo,jo,ë |
Ж | ж | жэ [ʐɛ] | [ʐ] | zh,ž |
З | з | зэ [zɛ] | [z] | z |
И | и | и [i] | [i],[ ʲi] or [ɨ] | i |
Й | й | и краткое「短いi」 | [j] | y,i, j |
К | к | ка [ka] | [k] | k |
Л | л | эль (эл) | [ɛlʲ] ([ɛɫ]),[ɫ] | l |
М | м | эм [ɛm] | [m] | m |
Н | н | эн [ɛn] | [n] | n |
О | о | о [о] | [o],[ɐ] | o |
П | п | пэ [pɛ] | [p] | p |
Р | р | эр [ɛr] | [r] | r |
С | с | эс [ɛs] | [s] | s |
Т | т | тэ [tɛ] | [t] | t |
У | у | у [u] | [u] | u |
Ф | ф | эф [ɛf] | [f] | f |
Х | х | ха [xa] | [x] | kh,h |
Ц | ц | цэ [tsɛ] | [t͡s] | ts,c |
Ч | ч | че [tɕe] | [t͡ɕ] | ch,č |
Ш | ш | ша [ʂa] | [ʂ] | sh,š |
Щ | щ | ща [ɕːa] | [ɕː],[ɕ] or [ɕɕ] | shch,sch,šč |
Ъ | ъ | твёрдый знак「硬音記号」 | [∅] 無音 | ʺ |
Ы | ы | ы [ɨ] | [ɨ] | y |
Ь | ь | мягкий знак「軟音記号」 | [ ʲ] | ʹ |
Э | э | э [ɛ] | [e] | e,è |
Ю | ю | ю [ju] | [ju] or [ ʲu] | yu,ju |
Я | я | я [ja] | [ja] or [ ʲa] | ya,ja |
https://en.wikipedia.org/wiki/Help:IPA/Russian
https://en.wikipedia.org/wiki/Russian_alphabet
この33文字について、「母音」、「子音」の2つに分けてご紹介します。
母音とストレスアクセント
硬母音と軟母音
まずロシア語において母音は次の2種類のグループに分けられます。それは「硬母音」と「軟母音」です。
硬母音
А(アー)、Э(エー)、Ы(ゥイー)、О(オー)、У(ウー)
軟母音
Я(ヤー)、Е(ィエー)、И(イー)、Ё(ィヨー)、Ю(ユー)
https://en.wikipedia.org/wiki/Russian_alphabet#Vowels
「軟母音」は名称の通り、ロシア語ネイティヴにとって「軟かい発音」として認識されており、
それは短い「イ」の半母音のような発音が先頭に付く母音であると認識されています。
この区別はロシア語を含むスラヴ系言語ではよくあるルールです。
但し注意点として、その区別はあくまでもロシア語ネイティヴにとっての“感覚的な分類”だということです。
そのため日本語話者にとってこの分類に則って発音習得をしようとすると、難しい場合が多いです。
よって、後ほどご紹介する国際音声記号を頼りに身に付けていきましょう!
ストレスアクセントとは?
実はロシア語の母音についてはもう一つの重要なルールがあります。
それは「ストレスアクセント」が存在するということです。
一般的な呼び方として、「アクセント、ストレス、強勢」と呼ぶこともあります。
例えば、хорошо́ [xərɐˈʂo] 「大丈夫、良いね、了解」という意味の単語を見ると、
оはストレスアクセントがあるときは[o]となりますが、ストレスアクセントがないときは[ə]や[ɐ]のようになります。
このルールはロシア語特有ではなく、英語にも見られる特徴です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Vowel_reduction
このようにロシア語では母音にストレスがあるか・ないかで発音が大きく変わることがあります。
「ストレスの位置が分からんくても、文脈とノリで通じんちゃうの?」と思う人もいるかもしれません。
実は下記のように単語によっては意味まで異なってしまい、まずい状態になることもあるので要注意です!
ПИСАТЬ(ピーサチ):「おしっこする(小児語)」
しかし、このように間違えるとまずいストレスアクセントの記号については
教科書のような学習者向けの文章にしか表記されていません。
つまり、Webページやニュース記事などではそれらの記号は表記されることはありません。
よって、ロシア語では母音の文字についてストレスアクセントの位置が分からない状態では
そのままローマ字読みができないという問題があります。
そのため、母音のローマ字読みはロシア語において学習を始めた段階では仕方ありませんが、
将来的にはストレスを意識して、発音を仕分けるようにしていきましょう!
ただ先程申し上げた通り、ロシア語のアクセント記号は学習者向けの表記で
一般向けには表記されていないというのは学習時に困るのではないでしょうか?
そこでアクセントの位置を知るために便利なツールを3つご紹介します
https://en.wiktionary.org/wiki/Wiktionary:Main_Page
2.ChatGPT(アクセントを打つように命令する)
https://chat.openai.com/
3.文章にストレスアクセント記号を付加するサイト
https://russiangram.com/
上記を使えば、教科書には出てこないようなある程度、難しい単語でもストレスアクセントの位置が分かるようになります。
理想としては単語ごとにストレスの位置をすべて覚えたいところですが、
実際のところ慣れていけば一定のパターンがあることは分かってくるのでご安心ください。
子音×母音×ストレスアクセントの組み合わせによる発音の変化
母音にストレスがあるか・ないかで発音が大きく変わることがあるとお伝えしましたね?
さらに複雑なことに以下のような子音・記号の後に母音が来ることで母音の発音が変化することになります。
その変化を起こす子音についてそれぞれ軟子音、硬子音という区別があるそうです。
https://www.coelang.tufs.ac.jp/mt/ru/pmod/practical/01-02-00-01.php
細かい音声記号の意味や発音の仕方などは後ほどじっくりご紹介しますが、
ここで子音・母音・ストレスアクセントの有無で発音が変わることを簡易的に示したものが下図になります。
こちらは外国語版のWikipedia(2024年8月時点)に掲載されている表です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Russian_phonology
しかしながら、上図は簡易的すぎて実用的とは言えませんので、
私の方で数カ月かけて独自に単語例や不足分のパターンを大幅に追加し、改造しました。
少なくとも日本語で得られる子音と母音の組み合わせに関する情報としては
最も正確かつ詳細なものかなと自負しています(笑)。
それが下図になります。
・子音×母音×ストレスアクセントによる発音のパターン表
・参考
https://en.wikipedia.org/wiki/Russian_phonology
https://de.wikipedia.org/wiki/Russische_Phonologie#Vokalbuchstaben
https://es.wikipedia.org/wiki/Fonolog%C3%ADa_del_ruso
ここまで子音×母音×ストレスアクセントによる発音のパターンのご紹介でした。
「こんな表すべて覚えなあかんのやろか?」と怯んだ人もいるかもしれません。
もちろん、全てを丸暗記する必要はないと思います。私も知らない発音のパターンがいっぱいありました。
あくまでも標準的な発音を練習する際の目安になれば幸いです。
母音の発音練習
では、ここから実際にロシア語の母音の発音を身に付けていきましょう!
すでにご紹介した通り、ロシア語にはストレスアクセントなどの母音に関する細かい法則がありましたね。
それらの母音をどうすれば習得できるでしょうか?
実は発音を専門的に扱う音声学では人間が発音可能な母音の関係を
下図のように一つの図で表すことができます。すごいですね!
https://ja.wikipedia.org/wiki/国際音声記号
この図を使えば、ロシア語のいかなる母音が出てこようとも自分で発音を確かめながら調整することが可能です。
というのも日本語の母音も同じ図で表すことができるからです。
つまり、あなたが日本語ネイティヴなら、それ以上の才能は必要なく、
日本語の母音から、ロシア語の母音にどう近づければいいかの“方法を知るだけ”でいいんです。
勿論、知るだけと言っても図の読み方などは理解いただく必要はあるのですが、
あくまでもロシア語の発音習得に絞った説明に留めます。
さて、上の図の説明に戻ると、これは母音の発音の仕方を表しています。
例えば、図の縦方向は口の開き具合、横方向は舌の位置を示しています。
さらに記号が2つに並んでいるものは唇の形を表しており、
左側が唇を丸めない・尖らせない発音で、右側が唇を丸める・尖らせる発音になっています。
日本語・ロシア語の母音がそれぞれどこに位置するかはこの後ご紹介しますが、
ひとまず、この図の簡単な見方が分かれば大丈夫です!
АаとЯяの発音
上図の通り、ロシア文字АとЯだけでも非常に多くの発音があります。
まずは日本語と近い発音がどれかを確認しましょう!
下図を見ると、ロシア語と日本語の母音の位置を比較できます。
・非円唇前舌広母音[a]
ロシア語のА[a]は日本語のア[ä̝]と近いことが分かるでしょうか?
そのため、これについては日本語の発音のままでも通じるということが分かります。
もしよりネイティヴ発音に近づけたい方のために少し理論的な話をすると、
日本語は中舌で、ロシア語は前舌で発音するという違いがあります。
具体的にお伝えすると、日本語のアより明るめに発音することでロシア語のА[a]に近づくはずです。
理論的な説明が分からない場合は音声サンプルを聞きながら、真似して見るだけでも効果はあるでしょう!
https://en.wikipedia.org/wiki/Open_front_unrounded_vowel
・非円唇前舌狭めの広母音[æ]
ロシア文字のАとЯにはこの発音が使われることがあります。
この発音は英語の発音記号で見たことがある人もいるのではないでしょうか?
発音の仕方としては、「エ」と「ア」の中間音または同時に発音する感じです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Near-open_front_unrounded_vowel
・中舌中央母音[ə]
この記号は曖昧母音と呼ばれる発音として使われることもありますが、ロシア語の場合は正確には違うようです。
こちらの発音は一般的には舌を脱力させて、どの母音にも聞こえるような音を出せばいいと説明されます。
わかりにくいですね。さらに日本語の発音にはないので、習得が難しいと思うかもしれませんが、実は簡単です。
いわゆる「ゾンビ」の出す声が曖昧母音に最も近く真似しやすいと思っています。
ソンビがわからんという人は舌が麻痺して、うまく動かせないイメージで発音してみましょう。
はっきりしないどの母音でもないゾンビのような発音ができれば大丈夫です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Mid_central_vowel
https://en.wikipedia.org/wiki/Schwa
この発音はロシア語以外の言語でも広く使われているので、この機会に習得しておくと、
英語などで何かネイティヴっぽい発音をしているなと思わせることができるかもしれません。
ここまででロシア文字АとЯで使われる3つの発音をご紹介しました。
これ以外の発音はこのあとの文字でも出てくるため、そこでご紹介します。
ИとЫの発音
Иも複数の発音を持っています。一方、Ыは一つの発音しかありません。
こちらの母音の位置も図で表すと大まかには下図のようになります。
・非円唇前舌狭母音[i]
基本的に日本語のイ[i]の発音で大丈夫です。ほぼ変わらないはずです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Close_front_unrounded_vowel
・非円唇前舌め広めの狭母音[ɪ]
この発音はИиだけでなく、Аа、Яя、Ее、Ээ、Ёёでも使われているので、必要不可欠な発音と言えます。
こちらは日本語では使いませんが、英語やドイツ語の発音でもよく使われる発音です。
コツとしてはイ[i]とエ[e]の中間音、同時に発音するイメージです。
言い換えると、イ[i]にもエ[e]にも聞こえる発音[ɪ]をすれば大丈夫です。
例えば、「日本」という意味の単語Япония[(j)ɪˈponʲɪjə]で練習すると、
日本語読みの「イポーニイ」と「エポーニエ」を母音だけ中間的な発音、
つまり、どちらとも聞こえる発音にすると、よりネイティヴ発音に近づくでしょう。一緒に練習してみましょう!
https://en.wiktionary.org/wiki/Япония#Russian
ちなみに私の経験上、Японияについては国際音声記号の通り、
人によっては[jɪˈponʲɪjə]のように「イイポーニイ」と発音する人やウクライナ出身のロシア語話者は
ウクライナ語のようにЯпонія[jɐˈpɔnʲijɐ]「ヤポーニヤ」と発音することもありました。
これについてロシアは多民族国家ですので、
標準的な発音以外にも地域の言語の訛りや方言もあるということは念頭に置いておくとよいでしょう!
https://en.wikipedia.org/wiki/Near-close_near-front_unrounded_vowel
・非円唇中舌狭母音[ɨ]
[ɨ]は日本語には類似の発音がありません。文字としては「ゥィ」と読み仮名が振られていることが多いです。
一般的にはこの発音はЫыで使われると書かれていますが、
実際にはそれ以外の文字、Ии、Ее、Ээ、稀にАаにも使われるようです。
このようにロシア語では結構な頻度で使いますので必ず習得しましょう!
発音の仕方としては、日本語イ[i]の口をしながら、日本語のウ[ɯ]の発音をすれば大丈夫です。
ちなみにこの発音はロシア語のほかルーマニア語、モンゴル語、ベトナム語、グアラニー語などで使われます。
なお母音の図などを見ると、厳密には[ɨ]だけでも細かい種類があることが分かりますが、
音声学的にそこまで細かく発音を仕分けなくても十分に通じます。
より正確な発音には理論的な知識も必要なので、派生系の発音については余力がある方のみ挑戦してみてください。
https://en.wikipedia.org/wiki/Close_central_unrounded_vowel
最後に綴りと発音の関係について触れておきます。
実はИиのときにЫы[ɨ]と同じ発音である非円唇中舌狭母音を使うパターンが決まっています。
具体的には以下の子音(Ж、Ш、Ц)の後ろにИиが来る場合、母音の発音はЫ[ɨ]と同じになります。
жить [ʐɨtʲ]
https://en.wiktionary.org/wiki/жить#Russian
шить [ʂɨtʲ]
https://en.wiktionary.org/wiki/шить#Russian
цирк [t͡sɨrk]
https://en.wiktionary.org/wiki/цирк#Russian
このようなロシア語の発音について国際音声記号で書かれているものは日本では少ないです。
そのため、正確な発音を知りたい場合はすでにご紹介した「Wiktionary」というサイトで検索してみてください。
特に英語版の「Wiktionary」については私も毎日使うほどおすすめです!
ЕとЭの発音
すでにご紹介した発音については説明を割愛します。
一般的に教科書ではЕは「ィエ」、Эは「エ」と読み仮名が振られていることが多いです。
・非円唇前舌半狭母音[e]
母音の図を見ると、日本語のエ[e]とも近いですが、
正確には日本語のイ[i]もやや近い発音のようです。
言葉で説明しても分かりにくいと想うので、詳しくはサンプル音源を参考に練習しましょう!
https://en.wikipedia.org/wiki/Close-mid_front_unrounded_vowel
・非円唇前舌半広母音[ɛ]
一般的には[a]に近い、[e]だと説明されます。音声サンプルを聞きながら、一緒に練習してみましょう!
ロシア語だけでなく、フランス語、ドイツ語、韓国語、タイ語などなど非常に多くの言語で使用されます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Open-mid_front_unrounded_vowel
Е、Эの発音の発音については以上です。
ОとЁの発音
・円唇後舌半狭母音[o]
日本語のオ[o̞]とはほぼ同じなので、そのまま発音して大丈夫です。
もしよりネイティヴ発音に近づけたいのであれば、これは私の主観ですが、
[oː]のように少しだけ伸ばす感じで発音するといいかもしれません。
話者によっては[ɔ](ア[a]に近い[o]と説明される)と発音することもあるようです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Close-mid_back_rounded_vowel
・円唇中舌半狭母音[ɵ]
この発音はロシア語のほか、モンゴル語、広東語などで使われます。
私もうまく発音できる自信はありませんが、図を見ると分かる通り、
すでにご紹介した中舌中央母音[ə]に近いことが分かります。
中舌中央母音[ə]について改めて説明すると、いわゆる「ゾンビ」の出す声が最も近いという話でしたね。
https://en.wikipedia.org/wiki/Mid_central_vowel
https://en.wikipedia.org/wiki/Schwa
中舌中央母音[ə]の発音ができたら、今度はそれを発音しながら、
唇を尖らす、または喉の奥から音を出すようにすると、円唇中舌半狭母音[ɵ]に近くなります。
唇を尖らすということが分かりにくい場合はいわゆるゴリラっぽいモノマネをしながら、発音してみてください。
ここまでできたら、最終調整します!Ёは単独では「ィヨー」のように先頭に短いイのような発音がつきます。
それを踏まえて、唇を尖らしながら、発音すると音色が変わるのが分かるでしょうか?
ただここが問題で、練習では徐々に唇を尖らすことでうまくできる可能性が高いですが、
実際の会話ではそのような調整はできません。
そのため、特に唇を尖らした場合、どの発音が正解だったのか段々と分からなくなってくることがあります。
これを解消するコツとしては、唇を尖らせて、曖昧母音を発音しながらも、「ィオー」と思い浮かべ、
その音色を少し加えると丁度良いかと思います。
それでもできているかわからない場合は先程の状態から、唇を横に広げてその発音が
自分の知っている発音のどれに近いかを確認しながら調整すると良いでしょう。
Ёの音声サンプルを聞きながら、同じになるるまで百回ほど練習しましょう。
https://en.wikipedia.org/wiki/Close-mid_central_rounded_vowel
・中舌狭めの広母音[ɐ]
主にモスクワ方言で使われます。日本語のア[ä̝]と曖昧母音の中間のような発音で大丈夫です。
言葉で説明しても分かりにくいと思うので、音声サンプルを参考に何度も聴き比べながら練習すると良いでしょう!
https://en.wikipedia.org/wiki/Near-open_central_vowel
https://en.wikipedia.org/wiki/Open_central_unrounded_vowel
・非円唇後舌半広母音[ʌ]
前述のモスクワ方言で使われる中舌狭めの広母音[ɐ]の代わりに、主にサンクトペテルブルク方言で使われる発音です。
一般的には[ɔ](ア[a]に近い[o]と説明される)と対になる発音と説明され、英語の発音記号でも登場しますよね?
発音の仕方としては[ɔ]の発音をしながら、唇を横に広げる感じです。
ほかの発音の仕方としてはオ[o]の要素を少し含んだ曖昧母音と言えば良いかもしれません。
https://en.wikipedia.org/wiki/Open-mid_back_unrounded_vowel
ОとЁに関する発音の説明は以上です。
УとЮの発音
・円唇後舌狭母音[u]
この発音は一見簡単そうに見えて要注意です。なぜなら、[u]は日本語のウ[ɯ̹]とは根本的に違うからです。
言い換えれば、他の言語で非常によく使われる[u]を日本語では使っていないことが問題かもしれません。
コツとしてはほかの発音でもすでに説明したのですが、「唇を尖らす・すぼめる」ことがポイントです。
いわゆるゴリラのまねをしながら、喉の奥の方から音を出すことをイメージすれば、自然とできるでしょう。
https://en.wikipedia.org/wiki/Close_back_rounded_vowel
・円唇後舌め広めの狭母音[ʊ]
この発音は英語、中国語、ドイツ語などでも使われるので見たことがある人もいるかもしれませんね。
コツとしては先程の円唇後舌狭母音[u]をやや緩めの唇にする感じです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Near-close_near-back_rounded_vowel
英語でも使われるため、下記サイトの「英語「U」の発音のコツ」も参考にすると
円唇後舌狭母音[u]の半分くらいの長さで発音すると自ずと発音できるようです。
https://hatsuon.merise.asia/media/1338
・円唇中舌狭母音[ʉ]
この発音はすでに登場したЫы [ɨ]と対になる発音です。
下図の通り、Ыы [ɨ]の唇をすぼめたり、丸めたりしたものが該当します。
したがって、発音の仕方としてまずは[ɨ]を発音しながら、唇を尖らせましょう!
実際にやってみると結構難しいので、音声サンプルを百回くらい聞きながら、調整が必要です。
記号自体に横半分スラッシュが入っていることから分かるように
[u]の要素を加えると、良いと個人的には思います。
ただしユのような発音に聞こえる[y]にならないようにご注意ください。
母音のまとめ
ここまでで、全ての母音単独の発音について簡潔にご紹介しました。
実際には子音と組み合わさることで発音の難易度が格段に上がることもあるため、
音声学的に綺麗な発音をすることにこだわりすぎると、失敗します。
よって、初めから完璧を目指さずに数年かけて徐々に身につけていくことをおすすめします。
※私の経験上、ネイティヴ話者は基本的に自分の言語を知ってくれているだけで嬉しいようなので、大丈夫です!
もし分からない場合はこちらにコメントや質問いただければ、可能な限り私が回答しますし、
場合によっては、発音に詳しい優秀なチャンネル登録者のかたがサポートしてくださることも大歓迎です。
硬音記号と軟音記号
ではここからはロシア文字の一覧に入っているのにもかかわらず、正確には文字ではない、
2つの重要な記号について学びましょう!
この2つの記号はそれ自体に発音があるわけではありませんが、発音に関する特殊な役割を果たします。
言うなれば、日本語で使う「促音(小さい ッ)」や「長音記号(伸ばし棒)」のような存在だと理解すれば良いでしょう。
実はこれらの記号はロシア語においては欠かせない存在であり、さらにローマ字にはない便利さがあります。
なによリ、自身の名前や日本語の単語をロシア語で書く際にも必須です!
硬音記号Ъ
それではまず硬音記号についてご紹介します。
すでに述べたように硬音記号はそれ自体に発音はありませんが、
直前の子音と直後の母音を分けて発音させるときに使います。
https://en.wiktionary.org/wiki/сесть
съесть [sjesʲtʲ] 「食べる」 硬音記号あり
https://en.wiktionary.org/wiki/съесть
硬音記号が入ることで、接頭辞с と есть「食べる」をそれぞれ分けて発音することで、
сесть [sʲesʲtʲ] 「座る」と区別ができるようになります!
今度は日本語の地名や人名をロシア文字で表記してみましょう!
例えば、「大野さん」と「小野さん」の場合、普通のローマ字で書かれると読み方がわからないこともあるかと思います。
「いやいや、小野さんと大野さんの場合は、大野さんのときにHを挟んでおけば区別できるやん!」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、その方法では残念ながら日本語の特徴を全く知らない外国人だとそのHを読んでしまうことがあります。
その場合、OHNOはオフノやオホノのように正しく読めない可能性が生じます。
このように日本語をローマ字で書こうとすると統一感のない複数の表記方法が生じてしまうのですが、
なんとロシア文字では硬音記号を使うだけで、その問題を解消する事ができます。
つまり、硬音記号は日本語の人名や地名をロシア文字で書くときに必須と言えますよね?
軟音記号Ь
さて硬音記号に対して、軟音記号というものもあります。こちらも軟音記号自体に発音はありませんが、
こちらは子音の後ろについて発音を軟音化させる役割があります。
単語 発音
день [dʲenʲ]
https://en.wiktionary.org/wiki/день#Russian
здесь [zʲdʲesʲ]
https://en.wiktionary.org/wiki/здесь
есть [jesʲtʲ]
https://en.wiktionary.org/wiki/есть
実はこの発音は日本語にある「拗音(ようおん)」という発音が一部該当します。
拗音とは日本語のャ(小さいヤ)、ュ(小さいユ)・ョ(小さいヨ)のことです
そのため、軟音記号がついた場合の、発音のコツとしては拗音の音色を加えればいいということになります。
特に以下の発音についてはロシア語と日本語でよく似ているようです。
キャ行 [kʲa̠],[kʲiː],[kʲɨᵝ],[kʲe̞],[kʲo̞]
ギャ行 [ɡʲa̠],[ɡʲiː],[ɡʲɨᵝ],[ɡʲe̞],[ɡʲo̞]
ビャ行 [bʲa̠],[bʲiː],[bʲɨᵝ],[bʲe̞],[bʲo̞]
ピャ行 [pʲa̠],[pʲiː],[pʲɨᵝ],[pʲe̞],[pʲo̞]
ミャ行 [mʲa̠],[mʲiː],[mʲɨᵝ],[mʲe̞],[mʲo̞]
https://en.wikipedia.org/wiki/Japanese_phonology
https://en.wikipedia.org/wiki/Help:IPA/Japanese
ただし、上記以外の拗音についてはロシア語の軟音記号とは違う発音もあるので注意です。
それをまとめたものが次の表です。
ロシア語の軟音記号を含む発音の中で、ここではть[tʲ]についてご紹介します。
この発音は非常に重要で頻繁に使われるため、必ず習得しましょう。
ть[tʲ]という綴りは基本的に「動詞の原形」を示す語尾として毎日使うくらい見かけるものです。
また、日本語のチ[t͡ɕi]やチャ行[tɕ]の発音とは異なるため、注意が必要です。
なお、他の子音については後の章で説明します。というのも、軟母音の話から逸脱しないようにするためです。
・ть[tʲ]の発音習得のコツ
音声学的には以下のように説明されるようです。
「硬口蓋化とは、子音が調音点で調音されると同時に、前舌面が硬口蓋に向かって盛り上がって近づく現象のことである。母音[i](イ)と調音器官の形が似ている。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/口蓋化
「うんうん、めっちゃ分かるで!」と思った人は9割ほどいるでしょうか?
全く持って意味不明ですよね。そのため、ここでは独自の方法を3つご紹介します。
独自の方法
1、日本語のチ[t͡ɕi]を頭に思い浮かべながらも、発音するときはtで止めるイメージ
例:знать[znatʲ] 頭のイメージznati→発音するときznat(i)
https://en.wiktionary.org/wiki/знать#Russian
2、「ちょっ!」[t͡ɕo̞]を意識して、非常に短く・余裕がないようなt[t]を発音する。
t[t]のような発音で短く弱い息で舌打ちをする。
3、日本語のチ[t͡ɕi]より舌を少し浮かせて、優しく柔らかく短くt[t]のように発音する
https://en.wiktionary.org/wiki/-ть
上記のコツを参考にあとは音声サンプルを繰り返し聞きながら、
それに近づくように100回ほど練習や調整していきましょう!
ここまで、ロシア文字には硬音記号と軟音記号があることをご紹介しました。
硬音記号についてはご自身の名前や日本語の単語をロシア語で書く際に必須でしたね?
さらに軟音記号についてもть[tʲ]は動詞の語尾として使わない日はないくらい重要でした。
どちらも抑えておきましょう!
子音の発音練習
ではここからは子音の発音を学びましょう!大きく分けて以下の3種類を学びます。
- 日本語と同じ発音で良いもの
- 日本語と一部共通した発音を持つもの
- 日本語にはないもの
日本語と同じ発音で良いもの
下記の子音については日本語のものと同じなので、日本語読みそのまままで大丈夫です。
注意すべき点としてはЧについては下図のように例外的にШ[ʂ]の発音になることがあります。
単語 発音 意味
что [ʂto] 何
https://en.wiktionary.org/wiki/что
конечно [kɐˈnʲeʂnə] もちろん
https://en.wiktionary.org/wiki/конечно#Russian
скучный [ˈskuʂnɨj] 退屈だ
https://en.wiktionary.org/wiki/скучный
Булочная [ˈbuɫət͡ɕnəjə],[ˈbuɫəʂnəjə] パン屋の
https://en.wiktionary.org/wiki/булочная
特に疑問詞の場合はこの例外的な発音を使います。
理由として、私が調べたところ、かつてのモスクワ方言ではЧчをШшように読んでおり、
その名残としてこのような読み方になっているようです。
最初は混乱するかもしれませんが、パターンは決まっているので慣れてくれば大丈夫です。
https://ru.wikipedia.org/wiki/Ч
このように例外的な読みをする文字については詳しく解説されている方がいらっしゃったので
その方のブログに参考サイトを載せています。
https://gen-gogaku.com/russian-orthography/
以上、日本語と同じ子音を持つ文字をご紹介しました。
日本語と一部共通した発音を持つ子音
次は日本語と一部共通した発音を持つ以下の子音を学びましょう!
一部同じ発音があるからこそ、発音間違いをしやすいものが数多くあります。
すべてを一度に習得するのは難しいので、復習用のブログも合わせてご覧いただくと効果的でしょう。
Тの発音
子音単体であれば、日本語と同じですが、後ろに母音が加わることで日本語にない発音に変化します。
子音と母音を組み合わせた発音を表にまとめると以下のとおりです。
https://gen-gogaku.com/russian-orthography/
ここで大切な注意点があります。
それは日本語の音声記号とロシア語の音声記号は完全に一致した発音であるとは言えないということです。
上記のような表で音声記号を見て、どれが同じ発音か違う発音なのか分かると思いきや、
実際には同じ表記でも違う発音も存在します。
特に子音と母音が組み合わせることで音声記号上は同じでも体感として
ロシア語と日本語で全然違う発音に聞こえるということは多々あります。
そのような不一致が起こるのは次のような理由があるのではと個人的には思います。
・ロシアと日本の音声学者がそれぞれの言語の表記について話し合って決めたわけではないから
そのため、ここからの子音の解説では、サンプルの音声も聞きながら、
あくまでもそれに合わせていくための目安として音声記号を使っていくという段階になります。
では具体的に表記が同じにもかかわらず、ロシア語と日本語で発音が異なるものはどれでしょうか?
それはロシア語のТの後ろに軟母音が付く発音です。
私の耳にはロシア語のТИ[tʲi]は日本語の「チ」と「ティ」の中間の発音のように聞こえます。
https://translate.google.co.jp/?hl=ja&sl=ru&tl=ja&text=%D0%A2%D0%98&op=translate
比率で表すと、日本語のチ:ティ=3:7くらいで発音するとちょうどよいかもしれません。
※ラボメンバー002の妻で試すとこれくらいの比率でした。
一緒に発音練習をしてみましょう!
(発音練習)
同じく子音の後に軟母音が続くもので、気をつけたい発音としてはТЕ[tʲe]があります。
https://translate.google.co.jp/?hl=ja&sl=ru&tl=ja&text=%D0%A2%D0%95&op=translate
このТЕ[tʲe]も日本語の「テ」や「テェ」ではなく、「チェ」のように発音されるので注意です。
こちらもコツとしては日本語のチェ:テェ=3:7くらいで発音すると良いでしょう。
このような発音の特徴があるため、ロシア語ネイティヴは英語などの外来語の[ti]の発音を
日本語の「チ」の発音のように読むことがあります。
例えば、英語のTim[tʰɪm]やteam [tʰiːm]をтим[tʲim]のように発音します。
ティをチと読む特徴は日本語訛の英語に似ているので親近感を持つ人いるかもしれませんね。
しかしながら、ロシア語話者は日本語話者のように「チ」と「ティ」の発音を仕分けることができないこともあるようです。
Tの発音解説は以上になります。
Дの発音
次はДの発音です。コツや注意点は先程のТの場合とよく似ています。
子音単体であれば、日本語と同じですが、後ろに母音が加わることで日本語にない発音に変化します。
子音と母音を組み合わせた発音を表にまとめると以下のとおりです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/た行
ここでも注意すべきはロシア語のДの後ろに軟母音が付く発音です。
私の耳にはロシア語のДИ[dʲɪ]は日本語の「ヂ」と「ディ」の中間の発音のように聞こえます。
https://translate.google.co.jp/?hl=ja&sl=ru&tl=ja&text=%D0%94%D0%98&op=translate
同じく子音の後に軟母音が続くもので、気をつけたい発音としてはДЕ[dʲe]があります。
https://translate.google.co.jp/?hl=ja&sl=ru&tl=ja&text=%D0%94%D0%95&op=translate
このДЕ[dʲe]も日本語の「デ」や「デェ」ではなく、「ジェ」のように発音されるので注意です。
こちらもコツとしては日本語のジェ:デェ=3:7くらいで発音すると良いでしょう。
特にロシア語にある外来語を聞き取る時に知っておくと役に立ちます。
例:Disk [dʲisk]、DVD(ди-ви-ди)、Disney(Ди́сней)
Дの発音解説は以上になります。
Сの発音
次はСの発音です。一見日本語のサ行音と同じ発音にも思えるのですが、
この後ご紹介する発音、ША,ЩА,СЯのように非常によく似た発音が存在するので、注意が必要です。
まずはどの発音が同じなのか、違うのかを理解するためにロシア語と日本語の発音を比較してみましょう!
https://ja.wikipedia.org/wiki/さ行
ここでも気をつけないといけないのは軟母音が続く発音です。日本語のシャ行の発音とは子音が違うからです。
これはロシア語に限らず、外国語を学ぶなら日本語話者は必ず全員意識しておかないといけないポイントです。
例えば、英語の例でいうと、sheとseeの発音を区別できていないのは日本の英語学習者でよく見られます。
そのため日本語訛の英語では、極端な例だとsit「座る」とshit「クソ、糞」が同じように聞こえることがあるようです。
特にロシア語は日本語のシのような発音が4種類ほどあるので聞き取りにも困ってしまいます。
個人的には「めっちゃ重要なことやのに学校で教えてもらわれへんかったのは悲しいな」と思いますね。
https://takto-explorer.com/2020/english-56-pronunciation-s-sh/
https://easyspeak-english.com/blog/detail/20211203154121/
さてこちらの発音習得の方法について調べると、「とにかく真似する」や「発音が違うので頑張りましょう」というような
非常に役に立たないものしか見当たらなかったので、私が独自に開発した発音習得の方法を2つご紹介します。
1つ目:「サ、ス、セ、ソ」の舌の位置を保ち、そのまま「スィスィスィ」と発音する方法
前述の発音の表の通り、日本語の「サ、ス、セ、ソ」の子音とロシア語のС[s]は同じ発音です。
つまり、口や舌の構えを変えずに母音だけを変えたら、ほぼ近い発音ができるということになります。
そこで、「サスセソ サスセソ サスセソ サスセソ」を連続で発音し、その口や舌の構えのまま、
母音を変え、イに徐々に寄せていき「スィスィスィ」と発音してみましょう!
これを10回くらい繰り返してスィができるようになったら、スィと日本語のシを交互に発音すると
違う発音なんだなとだんだん頭が理解してくるかと思います。
試しに「新聞」を日本語の「シンブンシ」とsiに変えた「スィンブンスィ」を交互に練習しても良いかもしれません。
これが「サスセソ、スィスィスィ」で習得する方法です。
・2つ目:音声学を参考に舌の位置を調整する
次は音声学を参考にした習得方法で1つ目より玄人向けです。
理論的な話なので音声学を知らない人は細かな意味は分からなくても大丈夫です。
使われる口の断面図を参考にすると、日本語のシ[ɕi]の発音はСИ[si]の発音に比べると、
特に舌先が下の歯の近くにあります。さらに舌の中央が若干盛り上がっていることが分かるでしょうか?
・[ɕ]
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiceless_alveolo-palatal_fricative
・[s]
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiceless_alveolar_fricative
日本語の「サスセソ」と「シ」の発音を比べてみると、確かに舌先の位置が違うような気もします。
あくまでも目安ですが、これを参考にすると、[si]と発音したければ、
舌先の位置は上の歯茎の裏当たりにあればよいと分かリます。
そのため、日本語で「シーーー」と発音しながら、
舌先だけを上のほうに持っていくと、自ずとスィの[si]の発音になるかと思います。
失敗例としては舌先を意識しすぎて、舌先を歯より前に出してしまう場合や
舌先が上の歯茎に密着してしまう場合です。
(デモ)
もちろん、安定的に出すには数百から数千回程度、練習が必要です。
練習するときは「サスセソ」の発音と同じように常に舌先が上の歯茎の裏の近くにあるかどうかを確認しましょう!
(練習)
以上が、[si]を習得するための方法でした。
もしうまく発音できない場合はこのあと似たような発音との区別ができていない可能性もありますので、
そちらを練習した後に再度試してみてください。
・発音のセルフチェック
ここまでいくつかの発音の習得方法をご紹介しました。
しかしながら、中には次のような課題に直面する人もいるのではないでしょうか?
それは「自分で正しく発音できてんのかそもそも自分では分からへんわ」という課題です。
人によっては大学で音声学について学んだため、多少セルフチェックできる人もいるかもしれませんが、
私も含め、音声学等の専門的な勉強をしていない人やそれでも発音に自身がないという人もいるかも知れません。
でもご安心ください。そんなときにあなたを助けてくれる超優秀なサポーターが存在します。
それは皆さんおなじみ、Google翻訳です!
https://translate.google.co.jp/?hl=ja&tab=TT&sl=ru&tl=ja&op=translate
Google翻訳というとありきたりな気がしますが、発音の練習の際には役立ちます。
なぜなら人間とは違い、間違った発音をしてもお世辞は言わず、精度良く間違ったものを出力するからです。
さらに千回、一万回発音しても嫌な顔ひとつしません。素晴らしい発音チェッカーと言えますね。
先程のロシア語のСの発音を練習するために以下の例文を作りましたので、
Google翻訳の音声入力であなたの発音がどのくらい正しく認識されるか確かめてみましょう!
・Сの発音のための例文
Сын сидел и пил сок с сёстрами.
[sɨn sʲɪˈdʲeɫ ɪ pʲiɫ sok s sʲɵstrəmʲɪ]
「息子は座っていて、姉妹たちと一緒にジュースを飲んでいました」
Google翻訳
ちなみに私の妻で実験したところsの発音がイギリス英語のthのような発音になる場合があるようなので、
もし英語が得意で余力がある人は、以下の文章も正しく認識されるか保険として試すと良さそうです。
A ship is sinking.
A ship is thinking.
A ship is sipping
A ship is shipping
※真ん中の文章は意味的に不自然なので、半々くらいで認識できれば大丈夫です。
このようにGoogle翻訳を使うことで人間よりも厳しい発音のセルフチェックができますので、
ぜひお試しください。
Зの発音
次はЗの発音です。一見日本語のザ行音と同じ発音にも思えるのですが、
既にご紹介した「Д+軟母音」やこの後ご紹介する発音Жのように紛らわしい発音が存在するので、注意が必要です。
まずはどの発音が同じなのか、違うのかを理解するためにロシア語と日本語の発音を比較してみましょう!
今度はЗの発音を習得しましょう。Зの発音はすでにご紹介したСの発音を濁らせたものなので、
基本的にはСのと同じやり方で発音を習得できます。ここでは習得方法を1つだけご紹介します。
・「ザ、ズ、ゼ、ゾ」の舌の位置を保ち、そのまま「ズィズィズィ」と発音する方法
前述の発音の表の通り、日本語の「ザ、ズ、ゼ、ゾ」の子音とロシア語З[z]は同じ発音です。
つまり、舌の構えを変えずに母音だけを変えたら、ほぼ近い発音ができるということになります。
そこで、「ザズゼゾ ザズゼゾ ザズゼゾ ザズゼゾ」を連続で発音し、その口や舌の構えのまま、
母音を変え、イに徐々に寄せていき「ザズゼゾ ズィズィズィ」と発音してみましょう!
これを10回くらい繰り返してズィができるようになったら、ズィと日本語のジを交互に発音すると
違う発音なんだなとだんだん頭が理解してくるかと思います。
これが「ザズゼゾ、ズィズィズィ」で習得する方法でした。
Зの単体の発音については以上になります、
◯Щの発音
次はЩの発音です。市販の教科書等ではあまり的確に発音解説されないこともあり、
後ほどご紹介するШとの発音の違いも曖昧な事が多いです。
全く同一ではありませんが、日本語の「シ」とよく似た発音です。具体的には子音の部分が同じです。
日本語で頑張って表記すると、「シィシィ」のように同じ子音が連続して発音されます。
この発音の習得方法については過去の動画で詳しくご紹介していますので、そちらをご覧いただければと思います。
「【前編】日本語訛りに永遠のサヨナラを!ロシア語ША,ЩА,СЧА,СЯのネイティヴ発音習得」
「【後編】日本語訛りに永遠のサヨナラを!ロシア語ША,ЩА,СЧА,СЯのネイティヴ発音習得」
ここでは動画になかったЩの文字の読み仮名に関して気をつけないといけないことをご紹介します。
ロシア語の教科書ではЩの読み方を「シチャー」と書いていることがあります。
しかしながら、前述の通り、ロシア語読みの場合は「シィシィ」のように読み、
「シチャー」のような発音ではありません。それにもかかわらず、「シチ」と読み仮名を振られるのはなぜでしょうか?
考えられる要因は次の2つです。
歴史を見ると、この文字Щはロシア語のもとになる言語では「シタ」のような発音であると考えられています。
その後、ロシア語では「シチャー」から、現在の「シィシィ」のような発音に変化したのですが、
ちょっと古い文献を踏襲した場合、「シチャー」のままになっているものがあるのかもしれません。
ちなみにこの発音の変化に伴い、ウクライナ料理として有名なБорщ「ボルシチ」は
ロシア語読みでは「ボールシィシィ」のように発音されるのに対して、
ウクライナ語読みでは「ボールシュチ」のように発音されるという違いを生んでいます。
2、ローマ字で転写した場合、ščのように表される
Щというのは通常のローマ字にはない発音なので、ローマ字だと転写に限界があります。
例えば、Щをローマ字で転写すると、主に英語圏ではshch, sch, ščのように無理のある表記になります。
そのため、そのような海外の教材を踏襲した際に実際の発音ではなく、前例に従った表記になる事があるので、
その結果として日本語でルビを振ると、「シチャー」のようになると考えられます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Shcha
ここまでのようにЩという文字一つとっても意外と説明なしでスルーされているところが多くありますので、
ご注意ください。
以上がЩの発音や読み方の解説でした。
Гの発音
この発音については過去の動画のコメントで解説してほしいとリクエストを頂いております。
それらのコメントによると、どうやらこの文字の発音についてネイティヴの先生から注意される人がいらっしゃるようです。
それはなぜでしょうか?今回はその原因とすぐにできる練習方法をご紹介します。
まずはロシア語と日本語の発音を比較しましょう!
https://gen-gogaku.com/russian-orthography/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E8%A1%8C
https://en.wikipedia.org/wiki/Russian_phonology
実は、日本語ではガ行音が文節の位置によって変化するという法則が存在するようです。
そのため、日本語訛りのままでロシア語を発音すると、その日本語話者の方言にも影響されて
ロシア語ネイティヴには不自然に聞こえやすい場合が生じるのだと個人的に推測します。
参考文献について興味のある人は以下のブログでご確認ください。
(以下ブログのみ掲載)
話者の分類 | 傾向のある地域 |
---|---|
鼻濁音使用話者 | 北海道、東北、栃木、千葉北部、東京、神奈川、静岡、山梨、長野、富山、石川、岐阜、滋賀、京都、大阪、兵庫、和歌山、徳島 |
鼻濁音不使用者(軟口蓋摩擦音使用者) | 千葉南部、埼玉、群馬、新潟、愛知、中国地方、九州のほぼ全域 |
参考「音声教育の実践 (日本語教師のためのTIPS77 第3巻)」
しかし、海外生まれやハーフだったり、引っ越しが多かったりすると上記の地域の傾向だけでは
自分自身がどの発音をしているのか判断できないという欠点があります。また中間型も存在する可能性があります。
いずれの場合でも問題のない習得方法を次にご紹介します。
(以上、ブログのみ掲載)
・Гの発音習得
「日本語訛りのまま発音したらあかん原因が分かったところで、結局どないして習得すんねん!」と思いませんか?
日本語話者向けの独自の習得方法を2つご紹介します。
1, 鼻をつまんで練習する
2, アメリカ人っぽく発音する
・鼻をつまんで練習する
この練習方法は前述でご紹介した「鼻濁音使用話者」に特に有効です。
まずロシア語のГの発音は少なくとも鼻濁音ではありません。この鼻濁音は鼻音と呼ばれる発音の一種です。
具体的に日本語で鼻音になるものとして、今回の「ガ行」の他に、「ナ行」、「マ行」、撥音「ン」があります。
つまり、ロシア語のГは鼻濁音にならないようにガ行の発音ができればよいということが分かります。
鼻音かどうかの判別するのは簡単で、鼻をつまんで発音すれば分かります。
なぜなら鼻音の場合は、発音したときに鼻詰まりのような発音になるからです。
それを自分で体感するためにも、以下の単語例で発音練習してみましょう!
赤い文字が鼻音に該当する発音なので、鼻をつまみながら、発音してみてください。
さてここまで話して、「ほんならロシア語のГの発音どないして習得すんねん!」ということになるのですが、
何も難しいことはありません。ロシア語のГは鼻濁音ではないということから、
鼻をつまんで発音した際に鼻詰まりのような発音を避けるように発音すればいいからです。
以下の単語で鼻をつまみながら、練習してみましょう!
дорога [dɐˈroɡə] 道
https://en.wiktionary.org/wiki/дорога#Russian
огонь [ɐˈɡonʲ] 火
https://en.wiktionary.org/wiki/огонь#Russian
сигнал [sʲɪɡˈnaɫ] 信号
https://en.wiktionary.org/wiki/сигнал#Russian
погода [pɐˈɡodə] 天気
https://en.wiktionary.org/wiki/погода#Russian
このような単語で鼻をつまんだり、つままなかったりしながら、Гの発音を繰り返し練習してみてください。
この方法であれば、近くに発音をチェックしてくれる人も不要なので、ぜひお試しください。
・日本語が苦手そうなアメリカ人っぽく発音する
次の方法は「鼻濁音使用話者」の人も「鼻濁音不使用話者」の人も関係なくできる方法です。
タイトルの通り、日本語が流暢すぎないアメリカ人のモノマネをすると発音しやすいと思います。
もちろん、日本語のような鼻濁音をあまり使わないなら、どこの国の人でも良いのですが、
ロシア語訛りの日本語のモノマネと言われてもイメージできないかと思います。
そこで、ここではイメージしやすい一例としてアメリカ人と表現しています。
※正確には英語も鼻濁音を使うのですが、練習のためイメージ例として挙げています。
https://studyenglishreal.seesaa.net/article/201504article_8.html
そこで、アメリカ人のモノマネをして、「ハガーキ!」、「ガガーク!」と大げさに発音すれば、
鼻濁音を使わないガ行の発音が実現できます。
同じようにアメリカ人になったつもりでロシア語のГの発音練習すると良いでしょう!
もう一度、以下の単語で練習してみましょう!
дорога (doroga) – 道
огонь (ogon’) – 火
сигнал (signal) – 信号
погода (pogoda) – 天気
2つ目の習得方法は直感的で分かりやすいですが、本当に正しい発音になっているか確認できないので、
1つ目の理論的な練習方法も合わせて知っておくとより安心でしょう!
簡単そうに見えて詰まるポイントが多い発音でしたね。以上がГの発音解説でした。
Нの発音
最後はНの発音です。こちらは日本語話者ならではの発音の難しさとロシア語特有の発音の特徴もあります。
まずは子音+母音の並びの発音を比較してみましょう!
https://ja.wikipedia.org/wiki/な行
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiced_dental,_alveolar_and_postalveolar_nasals
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiced_palatal_nasal
ここで注目したい点は、特に日本語のニとニャ行が、ロシア語のものとは若干異なるということです。
ただ個人的な経験として日本語の発音で代用しても、ネイティヴ的には十分伝わるようです。
ちなみにロシア語の「Н+軟母音」のネイティヴ発音を習得したい場合、どうすればよいのでしょうか?
音声学に詳しい人なら図を見て、舌の位置が違うことから再現できるかもしれませんが、素人には難しいですよね。
この場合、英語の発音解説に参考になる説明があります。
例えば、「НИ」の場合、「ニー」というよりは「ヌィー」のイメージで発音する
НЯの場合も「ニャー」というよりは「ヌィヤー」のイメージで発音するというものです。
こうすることで、自然に日本語のニャ行訛りが抜け、ネイティヴに近い発音になるという方法です。
ロシア語の場合は英語よりも、軟母音、言い換えると「イ」のような発音が強いですが、
このコツを参考に練習してもらえればやりやすいと思います。
ここまでは「Н+母音」の場合をご紹介しましたが、ロシア語ならではの特徴として、
нравиться[ˈnravʲɪt͡sə]のように「語頭Н+子音」の場合があります。
コツとしては「ヌラーヴィッツァ」と「ンラーヴィッツァ」の中間くらいで発音すれば、大丈夫です。
・参考サイト
https://en.wiktionary.org/wiki/нравиться#Russian
https://uwl.weblio.jp/speaking-test/column/pronunciation/pronunciation-n-m-ng
ここまで「Н+母音」、「Н+子音」の発音を見てきましたが、これはまだ簡単な発音です。
日本語使用者に最も気をつけてほしいのが、次の「母音+Н」のパターンです。
日本語では「ん」と表記され、この「ん」のことは、「撥水加工」の「撥」という漢字を使い、「撥音」と表現されます。
「発音」と「撥音」、紛らわしいですね。細かい理論や習得方法については過去の動画で解説していますので、
今回はロシア語に必要な部分のみをさらっと紹介します。
「鼻音のNとNGは明るい「ん」と暗い「ん」で区別できる! / 理論に基づき徹底解説【中国語 タイ語 韓国語 インドネシア語 ベトナム語 日本語】」
https://language-geek.com/how_to_distingui…tion_of_n_and_ng/
日本語ではこの発音が何種類もありますが、ロシア語においては撥音のようになるものは
[母音+n]と[母音+m]の2種類しかないようです。
[母音+m]は日本語読みでそのまま発音すれば大丈夫ですが、注意すべきなのは[母音+n]の場合です。
これについて日本語話者は鼻母音などで発音してしまいがちなので、対策が必要です。
ではどのようにすればよいのでしょうか?
コツの一つとしては「口の前で発音する」というものです。
この方法はAyaneさんという英語学習者向けのYouTubeチャンネルでご紹介されていたものです。
ショート動画なので、一瞬で視聴できます。
この方法がどういう理論でネイティヴの発音に近づくのか分かりませんが、
長年の多言語学習の経験から私は感覚的にこの方法は一定の効果があると感じています。
英語やロシア語に比べると、日本語やフランス語はどちらかというと鼻母音も多く、
口の中でモゴモゴと発音する傾向があるように感じます。
そのため、言語の特徴に合わせて、この「口の前で発音する」または「口の中で発音する」というのを使い分ければ、
直感的にネイティヴ発音を習得しやすいのではないでしょうか?
では実際にいくつかの発音で練習してみましょう!
(動画内で実演)
ここまでに紹介している理論的な話、例えば舌の位置や唇の形を理解しておいた上で、
口の前で発音するイメージを持っておけば、よりネイティヴ発音に近づくことができるでしょう!
日本語にはない子音
では残りの子音、日本語にはない子音についてご紹介します。
Рの発音
一般的に巻き舌と呼ばれる発音です。音声学では「歯茎ふるえ音」と呼ばれ、
日本語のラ行[ɽ]や英語のR[ɹ]とは区別されます。
この発音はロシア語以外でも使われる世界的にメジャーな発音ですが、
なかなか習得できていない人もいるのではないでしょうか?
そんな人のために全世界の手法を厳選・改良した練習方法や失敗例を
過去の動画でみっちりご紹介していますので、そちらを御覧ください。
すでに一万回以上再生されており、どの動画よりも役に立ったと大変ご好評頂いています。
「【理系解説】巻き舌 R[r],Tongue Trill 発音のコツ / 息の吐き方といびき!全世界の手法を厳選・改良」
https://language-geek.com/pronunciation_of_r/
ここではその動画で紹介したコツを簡単にご紹介します。まず巻き舌の発音習得に大事なことは2つあります。
1つ目は「息を強く吐くこと」で、2つ目は「いびき」です。
その2つが大切な理由として、歯茎ふるえ音は仕組みとして舌の筋肉をつかって震わせているのではなく、
息によって舌を震わせていることにあります。例えると、強い風で旗がたなびくのと同じ原理です。
そのため、歯茎ふるえ音の発音をするには、短時間で強い息を出す必要があります。
なお、「いびき」が大事だと言っているのは少数派で、おそらく私くらいかと思います。
歯茎ふるえ音と「いびき」は発音としては違うものですが、
理論的には「いびき」の時に生じる振動を舌の前や真ん中のほうに持ってくることができれば、
巻き舌は習得できると言えるからです。
さらに詳しいコツについては過去の動画をご確認いただければと思います。
Лの発音
こちらの正確な発音の習得には次の2段階の練習が必要になります。
1段階目は一般的な[l]の発音(明るいL、有声歯茎側面接近音)
2段階目は喉の方でLの発音(暗いL、軟口蓋化した歯茎側面接近音)
下図のように舌先を上の歯茎の裏にピッタリ付けます。
舌先はなるべくつけたまま、舌の側面から息が流れるように発音し、最後の最後に歯茎から舌先を離します。
唇を横に引っ張りながら発音し、前述の通り、“口の前で発音”するイメージだとやりやすいです。
最初は日本語のラ行や英語のRとの区別が付かないかもしれませんが、この方法を意識して1万回くらい発音すると、
だんだん違いが分かってきます。むしろそれらと区別ができない場合は正しく発音できていない可能性があります。
この一般的なLで発音するだけでもロシア語では十分伝わりますが、
もう一段階ネイティヴ発音に近づくためのポイントがあります。
イメージとしては先程のLの発音を口の前ではなく、喉のほうで発音します。
「ロシア語には特殊なLの発音があるんやな」と思うかもしれません。
しかし、この発音は英語にも存在します。
口の前で発音するLをClear L、つまり、明るいLつまりと呼び、
喉の方で発音するLをDark L、つまり、暗いLと表現しています。
(動画内で実演)
そして、ロシア語では「暗いL」と呼ばれる発音の方を主に使います。
音声学の理論的には「Lの発音の際に舌の根元を持ち上げて」と説明されますが、直感的に分かりにくいので
喉の方でLの発音を共鳴させるイメージ、または3割程度、「オ」の音色がかったLの発音をすれば、
単体の発音としてはできるかと思います。
ロシア語の教材ではこの暗いLの発音の仕方がほとんど説明されない一方で、英語発音の習得のために暗いLに関する数多くの動画が上がっていますので、もし分かりづらかった場合はそちらも参考されると良いでしょう!
・参考
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiced_dental,_alveolar_and_postalveolar_lateral_approximants#dark_l
https://eikaiwa.dmm.com/blog/learning-english/tips/l/
Хの発音
日本語のハ行[h]や英語の[h]の発音とは異なります。
この発音は現代アラビア語ﺧ、中国語h、ドイツ語ch、ベトナム語khなどでも使われます。
発音としては非常に簡単で、コツとしては寒い時に手に息を吹きかけるハーとすれば大丈夫です。
サンプル音源を聞くと、分かりやすいでしょう!
(動画内で実演)
ちなみにロシア語でこの発音を持つ単語をローマ字で表記する場合は通常、khという綴りになります。
そのため、ロシアの都市、Хабаровск(ハバロフスク)はローマ字転写: Khabarovskとなるため、
英語読みでは[ˈkɑbəɹɑfsk](カバロフスク)というように奇妙な読み方で読まれることがありますが、同じものです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiceless_velar_fricative
◯ВとФの発音
次の2つの発音は根本の発音の仕方は同じものなのでまとめて解説します。
この発音は一般的に他の外国語でいうVとFの発音に該当し、それぞれ対になる発音です。
日本語にはガ・ザ・ダのような濁音とカ・サ・タのような清音がありますが、それぞれ有声音と無声音と呼ばれます。
対になっているということはつまり、В[v]またはФ[f]のどちらかができれば、その反対もできるということになります。
そう聞くと、日本語話者の皆様は、「え、ファの発音はできるで~」と思うかもしれませんが、
日本語のファは音声学的に[ɸa]と表され、残念ながら日本語にはF[f]の発音は使用されていません。
日本語と同じ発音は主に韓国語やスペイン語で使われていますが、世界的に見るとかなり少数派です。
そのため、F[f]の発音は重要といえ、意識的に発音する必要があります。
発音のやり方自体は一般的なVやFと同じなので、聞いたことがある人もいるかも知れません。
よく聞くのは「唇を噛んで発音する」というものですが、実際にやっていると正しく発音できません。
下図の通り、正確には下唇の少し後ろに上の前歯を当てるようにして、歯と唇の間から息を出す感じです。
その状態で、最後にフッと声を出すと発音できます。
(動画内で実演)
逆にVの場合も同じ方法で、最後にブッと息を出します。この方法で正しく発音でき、一万回くらい練習すると、
日本語ネイティヴには聞き分けが難しいBとVの聞き分けも徐々にできるようになります。
これはロシア語以外の言語でも使えますので、習得しておいて損はないはずです。
・参考
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiceless_labiodental_fricative
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiceless_bilabial_fricative
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiced_labiodental_fricative
ШとЖの発音
ШとЖについても先程のВとФの発音と同様に有声音と無声音の関係になっています。
この発音は「反り舌音」と呼ばれ、ポーランド語やウクライナ語なのでスラヴ語ではよく見られるほか、
標準中国語ではSHとRの発音と同じものです。
コツとしては舌先を口の真上・天井部分に向け、そこに付くか付かないくらいギリギリの位置にします。
すでにご紹介した明るいLの発音を全体的に少し手前に持ってきて、舌先は付けないようなイメージとも言えます。
その口の構えのままで、シャやジャの音を出します。
次は別のアプローチをしましょう。音声学的にこの発音は日本語のラ行[ɽ]と近いです。
そのため、日本語のラ行の口の構えのまま、シャやジャの音を出すと近いかもしれません。
(動画内で実演)
この発音の練習方法については、ロシア語の発音習得に関する動画より、
中国語のものの方が圧倒的に解説例も多く分かりやすいことがあリます。
そのため、もし分からなかった場合は動画概要欄にブログから
そのままYouTubeの検索にとべるようにしていますので、それらをご確認ください。
https://www.youtube.com/results?search_query=中国語 そり舌音 コツ
・参考
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiceless_retroflex_fricative
https://en.wikipedia.org/wiki/Voiced_retroflex_fricative
https://chinese-labo.com/chinese-consonant/#2994-2-6
https://www.chinesemaster.net/pronunciation/intensive-course/retroflex-ch-zh-sh-r.html
Йの発音
日本語ではヤ[ja̠]、ユ[jɯ̟]、ヨ[jo̞]に使われている子音で、基本的に母音の前に来るかと思います。
一方、ロシア語のЙは以下の形容詞の語尾に見られるように母音のあとに来ることがほとんどです。
российский 「ロシアの」
発音の方法としては文字の名称の通り、「短いイ」で、大丈夫です。
もし正確にしたいなら、日本語のヤ[ja̠]の母音部分を発音しない口の構えをしてみてください
ちなみに例外的な使い方として、この文字は外来語にあるyo「ヨ」のような発音を表すために
й+оのセットで使われることがあります。ひとまず以下の3つだけを覚えておけば大丈夫です。
йод [jɵt] 「ヨウ素」
Иокога́ма, Йокоха́ма [ɪəkɐˈɡamə] 「横浜」
発音習得のまとめ
ここまでロシア語で使うすべての子音の発音とその習得方法について解説しました。
注意しないといけないのは音声学の理論を理解することと、習得のコツを学ぶことは全く別物ということです。
例えば、携帯電話の仕組みを物理学や情報工学の観点から大学教授並みに理解することと、
携帯電話をうまく使って、外国人とコミュニケーションすることは別のスキルであることは明白かと思います。
そのため、音声学になるべく沿う形で解説はしていますが、私自身も専門家ではありませんので、
中には間違いはあるかもしれませんし、音声学が絶対的な正解だと考えていません。
あくまでも外国語の発音習得をするための参考情報としてご理解いただけると幸いです。
さらにこの動画を見ただけで一瞬で発音習得するのは不可能だと考えています。
大切なことは何万回も繰り返し練習することです。
これはロシア語に限らずあらゆる分野の学習において共通して言えることです。
この動画でご紹介している習得方法も私やほかの学習者が数え切れない失敗した積み重ねの上に
成り立っていることを忘れてはいけません。
それを踏まえて、日々の発音練習を私と一緒にこなしていきましょう!
さて、実はこの動画では発音に関して、ご紹介しきれない部分があります。
それは似たように聞こえる発音や特殊な読み方をする綴りです。
それについて詳しくは動画概要欄にあるブログのみ載せましたので、興味のある方はご確認ください。
ブログ限定:似たような発音をまとめて比べる
ブログ限定:似たような発音をまとめて比べる
ロシア文字З[z]、「Д+軟母音」、Жの3つは日本語使用者には似ているように聞こえるかもしれません。
З | ЗА | ЗЫ | ЗУ | ЗЭ | ЗО |
---|---|---|---|---|---|
[zə],[zɐ],[za] | [zɨ] | [zu] | [zɛ] | [zo] | |
ЗЯ | ЗИ | ЗЮ | ЗЕ | ЗЁ | |
[zʲæ],[zʲa] | [zʲɪ] | [zʲʉ] | [zʲe] | [zʲɵ] | |
Д+軟母音 | ДЯ | ДИ | ДЮ | ДЕ | ДЁ |
[ˈdʲæ] | [dʲɪ] | [dʲu],[dʲʉ] | [dʲe] | [dʲɵ] | |
Ж | ЖА | – | ЖУ | ЖЭ | ЖО |
[ʐa] | – | [ʐu],[ʐʊ] | [ʐɛ] | [ʐo] | |
– | ЖИ | – | ЖЕ | ЖЁ | |
– | [ʐɨ] | – | [ʐɛ],[ʐɨ] | [ʐo] |
ДЯは日本語の「ジャ」に似た発音ですが、ЗЯは日本語にはありません。
日本語で読み方を書くとすれば、「ズゥィヤー」や「ズィヤー」のようになるかもしれません。
これは英語のgipとzipの違いと同じです。
練習のための例文をChatGPTで作りましたので、Google翻訳などで読み上げ機能を使って発音練習をしてみましょう!
例文: Саша сидел и смеялся, когда нашёл щенка.
発音: Sásha sidél i smeyálsya, kogdá nashól shchenká.
日本語訳: サーシャは子犬を見つけた時、座って笑っていました。
例文: Щётка лежала на синем столе рядом с сушёным мясом.
発音: Shchyótka lezhála na sínyem stolé ryádom s sushyónym myásom.
日本語訳: ブラシは青いテーブルの上に、乾燥肉の隣に置かれていました。
例文:Всё будет хорошо, сказал сосед, сидя рядом.
発音: Vsyo búdet khoroshó, skazál soséd, sídya ryádom.
日本語訳: 「全てがうまくいくよ」と、隣に座った隣人が言いました。
◯例外的な読み方
さて、ここまで一般的なロシア文字の読み方をご紹介しました。
しかしながら、どの言語でも例外的または特殊な読み方を行うものがあります。
それについては東京大学が提供している発音モジュールに詳しく書かれていましたので、そちらを参考にしてください。
https://www.coelang.tufs.ac.jp/mt/ru/pmod/practical/01-07-00-01.php
https://www.coelang.tufs.ac.jp/mt/ru/pmod/practical/01-10-00-01.php
おまけ:ロシア文字を学べる語学アプリ
ここからはロシア文字とその筆記体を習得するために役立つ語学アプリを2つご紹介します。
まず前提として、私は語学ミニマリストの先駆者として
語学アプリやWebサイトの使用を強く強くおすすめしています。
ここでは物理的な書籍のデメリットをいくつか挙げておきましょう。
・重くかさばる
・保管スペースが必要
・雨の中では使えない、汚れる、黄ばむ
・網羅的な検索機能がない
・音声を聞くためにCDやCDプレイヤーが必要
・書籍と音声・動画の再生位置を目視で確認しないといけない
・学習管理は書籍とは別で必要
・購入費用がかかる
もちろん、中学生時代の私は従来型の書籍中心の学習をしていました。
当時はそれが最善策だったからです。
しかし、あれから時代は大きく変わりました。
IT技術の進歩と浸透で、様々な語学アプリ、Webサイト、電子書籍などが登場し、
ロシア語やロシア文字についても格段に勉強しやすくなっているからです。
それによって現代では以下のような外国語学習が実現できるようになっています。
・携帯だけを持っておけば大丈夫
・文章、音声、画像を組み合わせた教材で学べる
・アプリによっては個人最適された学習ができる
・マイナーな言語についても専用サイトで検索できる
・分からない場合はChatGPTで文法解説ができ、話し相手にもなってもらえる
・場合によっては無料で使える
このように語学の分野においても、従来型の物理的な書籍ベースの学習から、物を持たず、
アプリやオンラインで学習を完結させる学習にシフトしていると言えるのではないでしょうか?
あくまでもそういった前提でロシア文字とその筆記体を習得するために役立つ
語学アプリやサイトを2つご紹介します。
Duolingo
全世界で5億以上ダウンロードされたことで有名な語学アプリです。
私は2021年から利用を始めましたので、比較的遅い方ですが、
日本では英語、中国語、韓国語の学習で使っている人も多いのではないでしょうか?
2024年時点で学習可能な言語だけで40言語ほどをサポートしており、
有料版は存在するものの、広告表示がある無料版で十分学ぶことができます。
このアプリのメリットとしては以下の3つです。
2. 単体の文字だけでなく、進んでいくと簡単な単語や発音が学べる
3. 自分が間違えやすい文字についても自動で復習できる
そしてもちろん、このDuolingoを使えば、ロシア語のフレーズはもちろん、ロシア文字を学ぶことも可能です。
ただし、現時点ではロシア語のコースは英語・スペイン語・トルコ語のいずれかの言語使用者向けのコースとして存在します。
そのため、日本では英語使用者向けのコースでロシア語を選択することになる人が多いのでは無いでしょうか?
説明だけ聞いてもイメージが湧きにくいと思うので、一度実際の画面を見ながらご紹介しますね。
(動画でデモ)
・Duolingoのロシア語のロシア文字の画面
https://www.duolingo.com/alphabets/ru/cyrillic
Duolingoは語学アプリの中でもゲーミフィケーションといって、ゲームのような感じで
学習ができるので、ゆるく少しずつ始めて行きたい人にはおすすめです。
前述の通り、もしDuolingoでロシア文字だけ学ぶのであれば、
日本語話者向けのロシア語のコースがないのはデメリットと言えます。
とは言え、高度な英語表現は出てこないので、毎日続けて1ヶ月ほどすれば慣れるかと思います。
※PCならブラウザの翻訳も使える
「それでも私は英語が苦手やねん!」という人もいるかもしれません。
そういう方はこのあと紹介する2つのアプリをお使いください。
ただし個人的にはロシア語やウクライナ語のようなスラヴ系の言語は
英語に比べれば、そもそも主に文法面での学習難易度が圧倒的に高いです。
そのため、ネイティヴ英語を目指す必要はないとしても、ロシア語の難解さを知った際には
英語というものが文法的にいかに簡単な言語であるか思い知らされるはずです。(笑)
もちろん、半分冗談です。
uTalk
こちらは150以上の言語が学べるアプリです。
Duolingoに比べると知名度がないように感じますが、マニアックな言語を学ぶ際にも役立ちます。
有料版では好きなレッスンから始められるようですが、
特にロシア文字だけを学ぶなら、無料版で十分です。
・無料で学べるアプリの中では対応言語数が最も多い
・音声と画像を使ったフラッシュカードで学習できるため、
文字が読めなくても進めやすく、記憶に残りやすい
・旅行などですぐに使えるフレーズをすぐに学べる
・単語、発音、文法の解説は一切ない
・画面の表示を日本語に切り替えることができる
・コインを貯めることで新しいトピックを解除できる
このアプリではロシア文字を学べるトピックがあるので、そこで学ぶことが可能です。
ただ注意点として、無料版ではロシア文字のトピックは学習開始時点では解除されていません。
ほかのトピックで学習し、コインを貯めた後、「アルファベット」のトピックを解除します。
このように、IT技術の発展によってロシア文字の学習環境は数年前に比べ、
劇的に改善されています。あなたもぜひお試しください。
ロシア文字だけが学べる語学アプリやサービスなら、これ以外にも良いものが存在すると思いますが、
特にこだわりがない人は無料で始められるDuolingo,uTalkのいずれかで始めてみてください。
そして、もしすでに学習中の方でおすすめのアプリやサービスがありましたら、
コメントで教えていただけると幸いです。
チャンネルのご紹介
最後にチャンネルのご紹介です。
私のチャンネルのキャッチフレーズは「今日からあなたもマルチリンガル!」です。
70言語勉強中の言語オタクの私が理系的発想と語学ミニマリストの観点から、
マルチリンガルになるためのコツや考え方を発信しています。
そんな私の夢は「全人類をマルチリンガル」にすることです!
もしあなたがマルチリンガルになるための手法をもっと知りたいと思ったら、
または私の夢に賛同いただけたら、お早めにチャンネル登録・高評価をお願いします。
ご質問、ご感想、リクエストなどありましたら、コメントいただけると必ず確認いたします。
では次回の動画でお会いしましょう!理系の言語オタク、日向でした。